予備校レポート Yobiko Report

「佐野らーめん店」で新しい人生を歩んでいく受講生や講師の方たちを、佐野らーめん予備校スタッフが直撃取材しました。

09

佐野らーめんの神髄!
青竹打ちに使う竹を探しに名人と竹林へ。

ゲスト
赤見屋本店
須永 登志郎さん
作成日 2022.12.19

今回のレポートは、佐野らーめんの麺を打つための竹を探すもの。創業昭和29年という佐野らーめんの老舗「赤見屋本店」のご主人 須永さんにご指導をあおぎ、佐野市内の竹林へ出向きました。受講生それぞれの運命の1本は、はたして見つかるでしょうか!?

おいしい麺をつくる作業は、竹探しから。

先代からの味を引き継ぎ、「赤見屋本店」の味を守って、50年以上のキャリアをもつ須永さん。今も毎日、自分で探して加工した青竹で麺を打っています。麺打ち用の青竹の作り方は、先代のお父様から教えてもらったとのこと。「おいしい麺を打つには、いい竹を見つけなくちゃいけない。麺打ちは、竹探しから始まるんだよ。うちの息子が使っている青竹も、一緒に採ったやつだよ。」竹を探すところから始まる麺づくりの文化は、三代目の息子さんにも脈々と受け継がれているようです。

3~5年目の丸い竹が乗りやすい。

「本当は寒の季節に採るといいんだよ。きゅっと締まっていて、いい竹が採れるんだ。」寒の季節とは、寒の入りから寒の明けまでをいい、1月5日頃から2月4日頃を指します。今回はスケジュールの関係上秋になってしまいましたが、本来であればもう少し寒い方がベストだそう。「乗りやすい竹っていうのは、太すぎても細すぎてもだめ。大体3~5年目くらいの、まっすぐ伸びたまんまるの竹がいいんだ。太さは、(円周)30cm前後かな。まぁここは体格や好みにもよるよ。」名人の言葉を頼りに、受講生たちがそれぞれの一本を探して、竹林を歩き回ります。

人間は変えられるけど、竹は変えられない。

「これ、どうでしょうか?」1本の竹を探し出した受講生の質問に、須永さんが答えます。「太さはちょうどいいね。少し楕円になっているけど、広い面を使えばたくさん延ばせるという利点もある。竹は変えられないけど、人間は変えられる。使い方を工夫して使いこなしてやればいいんだ。」あたりにいた他の受講生たちも真剣に耳を傾けます。人間のほうが竹に寄り添うという考え方には、日常生活の中で長く愛されてきた、佐野らーめんの自然で素朴な姿が投影されているように思えました。

ターゲットがきまったら、チェーンソーでカット。

「よし、これにしよう。」名人のお墨付きをもらったら、チェーンソーでカットしてもらいます。これもまた職人技。青竹として使う部分は根元のところなので、たくさんの竹が茂った中では、切った竹を引き出すのも一苦労です。便利な道具がなかった時代の苦労は、いかばかりだったでしょう。青竹を採り、それを使って麺を打つという、ずっと昔から変わらない佐野らーめんの文化を、身を以て体験できるというのはかなり貴重なものです。

運命の竹を手に、大満足のハイチーズ。

無事、ひとり1本ずつの運命の竹を見つけることができました。受講生のみなさんからは満足そうな笑みがこぼれ、それを見た須永さんも嬉しそうに微笑んでいます。「上手に使えば、15年も20年も持つから、大切に使ってやれよ。」その言葉を聞いて、これから先のらーめん人生を共にする相棒を、それぞれが愛おしそうに眺めていました。

コミュニティが生まれ、文化が継承される。

トラックに乗せた竹を「佐野らーめん予備校」に運びます。1本1本が長くて重さもあるので、なかなかの重労働。みんなで力を合わせて降ろします。ここにくるまでにも、たくさんの方が関わってくださっています。竹を無償でご提供くださった竹林の地主さん、竹の選び方を教えてくれる赤見屋本店の須永さん、そして佐野らーめん予備校運営の方々。年齢や立場を超えた皆さんが、佐野らーめんを盛り上げたいという想いから、受講生を支えようと一つになっています。佐野らーめん予備校から生まれたこのコミュニティを通して、佐野らーめんという文化が継承されていることを肌で感じることができる瞬間でした。さぁここからもう一作業です。

麺打ち台の広さや自分の体に合わせてにカット。

まずは竹を使いやすい長さにカットします。長さを決めるのは、麺を打つスペースの大きさや体のサイズなどによって、1m50cm~2mくらい。竹には節があるので、その少し先でカットすると、強度が増すそう。ここではチェーンソーは使わず、それぞれがのこぎりでカット。受講生も一生懸命力を込めて作業していました。

名人の秘密兵器で節を削る。

次は、竹の節を削ってなるべく平らにする作業。グラインダーでやる人が多い中、須永さんが持ってきた特別なカンナが大活躍。これは、番傘職人の方が使っていたという、刃の周辺がほんの少しへこんでいる特別なカンナだそう。そのため、竹の節をガッチリ掴み、効率よく削り取れるのです。「お疲れのところすみません。」と須永さんの体を気遣う受講生たちに、「これをやっておくことが大切だからな。」と笑顔で答える須永さん。佐野らーめんを後世に残すため、苦労も厭わず全力でご指導くださっている姿に、ただただ頭が下がります。

本邦初公開!?名人オリジナルの節抜き。

「やらない人もいるけど、俺はやっておくんだ。」と須永さん。聞けば、この鉄の棒で、竹の節を最後の1つを除いて抜くと、青竹が長持ちするんだとか。それを聞いて、さっそくやってみようという受講生たち。須永さんにやり方を教えてもらい、節をひとつひとつ数え、慎重に抜いていきます。先人の知恵はしっかり取り入れ、少しでもおいしいらーめんを作りたいという、受講生たちの熱い気持ちが伝わってきました。

すべてを惜しみなく教えてくれる名人に感謝。

「これでもうできることは全部やったかな。後は汚れを吹いてきれいにしておくこと。」と須永さん。「洗って干しておけばいいですか?」「いや!天日干しは絶対だめ!陰干しだ、陰干し。」「わ~聞いておいてよかった、天日干しするところでした。」と焦った顔で大笑いする受講生。何事も聞かないとわからないものです。「今日は酒がうまいな。わからないことがあったら俺に聞けよ。」そんな優しい言葉を残して、すっかり暗くなった中を 出前用のバイクに乗って帰っていく須永さん。その後ろ姿に深々と頭を下げる受講生。佐野らーめんの大切な文化がまたひとつ、確実に受け継がれた貴重な一日となりました。

予備校レポート一覧

「独立の夢を叶えた卒業生」記事はこちら